40分で終わらない人へ。手を速くするより、やり直しを減らします

「40分で終わりません」

技能試験の相談で、いちばん多いのがこれです。

東京の会場で、たぶん一番早く終わりました(笑)

自慢みたいで恐縮ですが、書かせてください。

私は東京の受験会場のなかで、一番早く終わったと自負しています(笑)

20分程度で全部終わりました。見直しをしても、まだ時間が余ります。最後のほうは、作品の置き方をいかに美しく置けるかで時間をつぶしていました。

一方で、隣の人は時間ギリギリでした。もしかしたら、間に合っていなかったかもしれません。

なぜ一番だと分かったかというと、たまたま席がいちばん後ろだったからです。

手を止めて顔を上げると、会場全体が見えるんです。まだ全員、手が動いていました。誰も終わっていない。だから「あ、私が一番早いな」と分かりました。

ついでに言うと、この後ろの席というのが、けっこう良かったと思っています。前の人の手元が気になりませんし、まわりが焦り出しても視界に入りません。自分の作業だけに集中できました。

同じ問題を、同じ40分で作っています。この差は、どこから来るのでしょうか。

速い人は、手が速いわけではありません

先に結論を書きます。

差がつくのは、手の速さではありません。止まるか、止まらないか。それだけです。

被覆をむく速さも、ねじを締める速さも、そこまで差はつきません。差が出るのは、手が動いていない時間のほうなんです。

私は、急いだつもりが一つもありません

早く終わったと書きましたが、正直に言うと急いだ記憶が一つもありません。

やっていたのは、こういうことです。

  • 長さを計って、切断する
  • また長さを計って、皮膜を取る
  • 器具に取り付ける
  • 次に行く

一つひとつ丁寧にやっているだけです。フツーのことを、フツーにやっている。それだけなんです。裏技も、特別な持ち方もありません。

そして、ここがいちばん大事なところです。余計な手順をしていないこと。

逆に、時間がかかる人ほど手順が増えています。もう一度計り直す、置いた工具を探す、付けたものを外す。一つは数秒でも、全部足すと10分単位になります。

時間を食っているのは、この3つです

指導していて見ていると、時間が消えるのは決まってこの3つです。

時間が消えるところ原因
迷って止まる 複線図があいまい。「あれ、これで合ってたっけ」で手が止まる
やり直す 圧着で線がずれた、皮膜を挟んだ。切り直して、やり直し
持ち替える 計る、切る、むく。工具を何本も行き来している

どれも「作業が遅い」話ではありません。作業以外のところで時間が消えています。

いちばん怖いのは、やり直しです

3つのなかで、時間への影響がいちばん大きいのがやり直しです。

圧着でずれる、皮膜を挟む。どちらも欠陥なので、やり直すしかありません。そして、やり直しは1回で終わるとは限らないんです。もう一度切って、入れ直して、また圧着して。

そうしているうちに時間切れ。これが、技能試験で落ちるいちばん多い終わり方です。

「速く作る練習」は、しなくていいです

時間が足りないと、速く作る練習をしたくなります。気持ちは分かります。

でも、これは逆効果になりやすいんです。

焦って作ると、リングスリーブの中で線がずれます。皮膜を挟みます。そしてやり直しになって、結局もっと遅くなります。

速さは結果であって、目標ではありません。止まらない状態を先につくれば、勝手に速くなります。

取り付ける順番で、やり直しの数が変わります

もう一つ、あまり言われていない話をします。器具を取り付ける順番です。

順番によって、取り付けやすい・取り付けにくい、圧着しやすい・圧着しにくいが変わります。同じ作品を作っているのに、順番だけで難易度が変わるんです。

  • 先に付けておけば、あとのケーブルが邪魔になりません
  • 後回しにすると、線が引っぱられた状態で圧着することになります
  • 引っぱられていると、リングスリーブの中でずれます

順番を間違えると、ロス時間とやり直しが増えます。作業そのものは同じなのに、時間だけ余計にかかる。もったいない話です。

この順番は候補問題ごとに違いますし、テキストにもあまり書かれていません。作っているところを横で見てもらうのが、いちばん早い部分です。

やることは3つ。全部、本番の前に片づきます

時間を短くする方法は、はっきりしています。どれも当日の話ではありません。

  1. まずここから 複線図を、迷わず書けるようにする

    目安は3分。手元に色分けした図があれば、作業中に確認できます。迷って止まる時間が消えます

  2. 手に合う工具に替える

    握り込めない工具を使っている限り、圧着のやり直しはなくなりません

  3. 持ち替えを減らす

    計る・切る・むくが1本でできる工具にすると、行き来がなくなります

それぞれ別の記事に書きました。複線図の書き方、圧着工具の選び方、工具を1本にまとめる話です。

クリップは、いります。特に女性は

いる・いらない論争がある道具の話をします。合格クリップ(ホーザン P-926)です。

私は「いります」と言い切ります。特に女性の方には、必ずすすめています。

いちばん効くのは、圧着するときに線がずれる人です。クリップでまとめたところで一度止まって、無理な引っぱりがないかを確認してください。

少しでも短いところがあると、ずれます。圧着した、まさにその瞬間にずれるんです。

ここがクリップのいちばんの値打ちだと思っています。クリップで留める段階で、長い・短いが分かるんです。

そして、その場で長さを調整できます。短い線を切りそろえる、そろっていない端を入れ直す。圧着してからでは、もう直せません。切ってやり直しです。

つまりクリップは、線をまとめる道具というより、圧着に入る前の最後のチェックポイントです。ここで一拍おけるかどうかで、やり直しの数が変わります。

メーカーも同じことを書いています。複線図どおりに接続するときにクリップでまとめておくと、圧着作業の前に配線を確認でき、誤配線を防げること。リングスリーブで圧着するときも芯線被覆の端をそろえた状態を保持できるので、慣れない人でも素早くきれいに作業できること。私が現場で感じていることと、そのままです。

試験に持ち込めるかどうかも、メーカーが公式に答えています。「技能試験では電動工具に該当しないため持込可能です」とのことです。

ただし、外し忘れには注意してください。付けたまま提出すると、それこそやり直しどころではありません。圧着が終わったら外す。これを手順に組み込んでおきましょう。

※ 出典:ホーザン株式会社「P-926 合格クリップ」製品ページ、および同社「電工試験の虎」よくあるご質問。
※ 上記のリンクは参考です。特定の販売店・メーカーとの提携関係はありません。当校では工具を販売していません。
※ 仕様は2026年9月時点のものです。試験に持ち込める工具は受験される年の受験案内でご確認ください。

早く終わると、何が起きるか

時間が余ると、いいことがあります。

  • 見直せます。接続、極性、寸法。落ち着いて確認できます
  • 直せます。間違いを見つけても、まだ手を打てます
  • 焦りません。これがいちばん大きいかもしれません

逆に、ギリギリだと見つけても直せません。気づいたときにはもう時間がない。この差は、そのまま合否になります。

第二種電気工事士 技能試験の候補問題を完成させた作品。端子台、ランプレセプタクル、連用取付枠の器具がケーブルでつながり、机の上に整えて置かれている
完成したところ。ここまで止まらずに来られるかどうかが、そのまま時間の差になります

余談:本番の線は、練習の線より切りやすかったです

これは完全に余談で、あくまで個人の感想として読んでください。

私が東京の会場で受けたとき、支給された線が、練習で使っていた線より柔らかく感じました。切りやすいし、皮膜もはぎやすい。「あれ、いつもより楽だな」と思ったのを覚えています。

ただし、これをあてにして練習しないでください。線はメーカーや製造時期でも硬さが変わりますし、私が受けた年の、私が当たった材料の話でしかありません。

言いたいのは逆のことです。硬い線で練習しておけば、本番はそれ以上に大変になりません。練習で「これは硬いな」と思う線を使っているなら、それはそのままで大丈夫です。中古の線で練習する方も同じで、切る感覚がつかめていれば十分です。

置き方まで気にする余裕を持ちましょう

冒頭に書いた「置き方をきれいに」というのは、時間つぶしの冗談半分ですが、半分は本気です。

作品は、そのまま採点されます。ケーブルが引っぱられていないか、無理な曲げになっていないか。置き方を整える余裕があるということは、そこまで見られているということです。

そこまでの余裕を目標にしてください。「40分で終わらせる」ではなく、「30分で終わって、10分見直す」です。

練習では間に合うのに、本番が不安です

本番は必ず慌てます。だから練習で「ちょうど40分」だと足りません。見直しの時間まで含めて終わる状態にしておいてください。

作業そのものが遅いと思います

たいていの場合、遅いのは作業ではなく、止まっている時間です。一度、手が止まった回数を数えながら作ってみてください。想像より多いはずです。

速く作る練習をしたほうがいいですか

おすすめしません。焦るとリングスリーブの中で線がずれ、やり直しになって、かえって遅くなります。止まらない状態を先につくるほうが確実です。

やり直しになったら、あきらめたほうがいいですか

あきらめないでください。ただし、やり直しが起きない状態で本番に入るのが本筋です。原因は工具か、複線図か、そのどちらかであることがほとんどです。

合格クリップは、本当に必要ですか

圧着で線がずれた経験があるなら、必要です。留める段階で長い・短いが分かり、その場で長さを調整できます。圧着してからでは直せないので、ここで気づけるかどうかは大きいです。試験にも持ち込めます。ただし外し忘れにだけ気をつけてください。

器具を取り付ける順番は、決まっているのですか

正解が一つあるわけではありませんが、やりやすい順番はあります。候補問題ごとに違うので、実際に作りながら決めていくのがいちばん早いです。

自分がどこで時間を使っているか分かりません

1コマ受けていただければ、その場で分かります。作るところを横で見ていれば、止まっているのか、やり直しているのか、持ち替えているのかは、はっきり分かれます。

技能試験の対策は技能試験対策のページ、落ちる原因の全体像はこの記事にまとめています。時間の使い方を見てほしい方は、無料体験レッスンからどうぞ。

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