計算が苦手でも受かります。でも分数と因数分解だけは逃げられません
「計算が苦手なんですが、受かりますか」
受かります。ここははっきり言えます。
ただ、残念ながら逃げられないものが2つだけあります。そして、その前にやっておくことがあります。
その前に。何ができないのかを、はっきりさせます
先に、いちばん大事なことを書きます。
自分は算数の何ができないのか。まずそこを整理してください。
現場で働きながら受験される方を教えていると、勉強からずいぶん離れている方が本当に多いです。分数の計算、割り算、因数分解。できない方はいっぱいいます。
これは、まったく珍しいことではありません。何十年も使っていないものが出てこないのは当たり前です。まずそこを、はっきりさせておきたいんです。
「計算が苦手」では、やることが決まりません
問題は、「計算が苦手」のひとことで済ませてしまうことです。
そのままだと、何を練習すればいいのか決まりません。参考書を開いても、どこから読めばいいのか分からない。結局、計算問題ごと捨てることになります。
だから一つずつ、できる・できないを分けます。下の項目を、実際に紙に書いて試してみてください。「たぶんできる」ではなく、手を動かして確かめるのが大事です。
| やってみること | 例 |
|---|---|
| 割り算 | 100 ÷ 20 を筆算で。小数の割り算も |
| 分数のたし算 | 1/10 + 1/10 = ?(通分できるか) |
| 分数のわり算 | 1 ÷ (1/5) = ?(逆数をかけられるか) |
| 式の変形 | V = R×I から R を出せるか |
| 平方根 | √100 = ? √(6²+8²) = ? |
| 因数分解 | 396 を 2 や 3 で割っていけるか |
詰まったところが、あなたの出発点です。そこだけ練習すればよくて、全部やり直す必要はありません。範囲が決まるだけで、ずいぶん気が楽になります。
分数の計算と、因数分解。この2つだけは必要です
分数の計算と因数分解。
この2つができないと、計算問題は手も足も出ません。逆に言えば、この2つさえ戻ってくれば、あとは公式に当てはめるだけになります。
そして、ここが大事なんですが、意外と忘れているものなんです。中学校でやった内容ですし、それ以来ほとんど使っていない方も多いと思います。
まずはそこを練習しておきましょう。電気の勉強を始める前に、です。順番が逆だと、公式が理解できないのか計算ができないのか、自分でも分からなくなります。
なぜ分数が要るのか。式が全部ひっくり返るからです
電気の計算は、ひとつの式を形を変えて使い回します。
- オームの法則:V=R×I。ここから I=V/R、R=V/I
- 電力:P=I×V。ここから P=V²/R、P=I²R
- 並列の合成抵抗:1/R=1/R₁+1/R₂
ぜんぶ分数です。「両辺を割る」「逆数にする」ができないと、そこで止まります。公式を覚えていても、覚えた形のままでは問題が解けないんですね。
並列は「積÷和」で暗算できます
並列の合成抵抗は、抵抗が2つなら「積÷和」で出ます。
10Ωと10Ωなら、10×10÷(10+10)=100÷20=5Ω。同じ数字が2つ並列なら、半分です。ここまで来ると分数を書かずに済みます。
なぜ因数分解が要るのか。ルートを整理するためです
交流の計算ではインピーダンスが出てきます。
Z=√(R²+X²)。抵抗とリアクタンスから、全体の流れにくさを出す式です。三平方の定理と同じ形ですね。
ここでルートの中身を整理する必要が出てきます。数を分解して、外に出せるものを出す。これが因数分解です。手が動かないと、答えの形にたどり着けません。
3:4:5 を知っていると、計算せずに済みます
これは覚えておくと得します。
抵抗が6Ω、リアクタンスが8Ωのとき。まじめに計算すると √(6²+8²)=√100=10Ω です。
でも6:8:10 は、3:4:5 を2倍しただけです。3:4:5 の組み合わせが出てきたら、答えは見えています。ルートの計算をしなくて済みます。
試験に出る数字は、だいたいきれいな形に作られています。気づけるかどうかで、時間の使い方が変わります。
三相は、√3 だけ覚えれば足ります
三相交流も出てきますが、覚えることは多くありません。
- Y結線:VL=√3 VP / IL=IP
- Δ結線:VL=VP / IL=√3 IP
どちらか片方に√3が付く、というだけの話です。Y結線は電圧に、Δ結線は電流に付きます。
思い出す順番
やることを順番に並べると、こうなります。
-
まずここから
分数の計算を思い出す
通分、約分、逆数。両辺を割って式を変形する。ここが土台です
-
因数分解と平方根
数を分解して、ルートの外に出す。三平方の定理も一緒に
-
公式を当てはめる
ここまで来れば、あとは覚えた式に数字を入れるだけです
いきなり3番から始める方が多いんです。だから「公式は覚えたのに解けない」となります。詰まっているのは電気ではなく、その手前です。
30問をどこで取るか、先に決めます
ここまで書いておいてなんですが、計算問題で全部取る必要はありません。
学科試験は50問中30問取れれば合格です。ということは、30問分をどこで取るかを、先に決めておけばいいということです。
「点が取れるところで取る」。これでいいんです。
私自身も、点数を取れるところで取る、と割り切って受験しました。まんべんなく仕上げようとすると、時間がいくらあっても足りません。
計算も、半分は取れるようにします
ここで大事なのは、計算をまるごと捨てないことです。
計算が苦手でも、半分は取れるようにしましょう。全部やろうとしなくていいんです。オームの法則まわりと、3:4:5 で答えが見えるものだけでも構いません。それだけでも合格率はぐっと上がります。
全部捨てると、残りで一問も落とせなくなります。半分取れれば、そのぶん他が楽になる。それだけの話です。
それでも、と思う方へ。どうしても苦手なら、3分の1でも合格することはできます。ゼロにさえしなければ、道は残ります。
ただ、それだと他の分野で落とせる余裕がなくなります。確率を上げるために、半分を目指しましょう。目標は半分、最低ラインが3分の1。そう思っておくと気が楽です。
確実に取れるのは、実物を知っている分野です
残りをどこで取るか。ここははっきりしています。
- 配線図・複線図:手を動かした経験がそのまま点になります
- リングスリーブの選定:表と、実物を触った記憶で解けます
- 鑑別:器具の名前と写真。握ったことがあれば忘れません
- 施工方法:作業として知っているかどうか
どれも計算力ではなく、実物を知っているかどうかで決まります。
だから技能を先にやると、学科でも点が取れるんです。詳しくはこの記事に書きました。計算が苦手な方こそ、この順番が効きます。
大人になってからのほうが、意外と分かります
最後に、これは伝えておきたいことです。
学生時代に苦手だった計算も、大人になって理解すると、思っている以上に理解できるものです。
理由ははっきりしていて、何のために使う計算なのかが分かっているからです。学生のときは「なんでこれをやるのか」が分からないまま、分数を通分していました。今は違います。この式で電流を出すため、と分かって計算します。
同じ内容でも、入り方がまるで違うんですね。「昔できなかったから今もできない」とは、まったく限りません。
もうひとつ言っておきます。ここまで分数だ因数分解だと書いてきましたが、出発点はもっと手前で構いません。
九九がわかれば、わかります。
割り算も、分数も、因数分解も、結局は九九の上に積み上がっているものです。そこさえ残っていれば、あとは順番にたどれます。「もう何もかも忘れた」と思っている方でも、九九は残っているものなんですよ。
計算が苦手な方は、相談してください。そこを隠したまま進めても、途中で必ず止まります。
そして計算から学習を始められるのが、マンツーマンの良さです。クラス単位の講座だと「そこは分かっている前提」で進みます。お一人ずつなら、分数からでも、割り算からでも始められます。誰かに合わせる必要がありません。
恥ずかしくて、算数ができないと言い出せません
言っていただいて大丈夫です。現場で働きながら受験される方には、本当によくあることです。できないところが分かったほうが、そこだけ練習すれば済みます。隠したまま進めるほうが遠回りです。
分数も因数分解も、もう完全に忘れました
ほとんどの方がそうです。中学の内容なので、思い出すのに何か月もかかりません。市販のドリルでも構いませんし、体験レッスンで今の状態を見てご提案することもできます。
計算問題は全部捨ててもいいですか
全部は捨てないでください。目標は半分、最低ラインが3分の1です。どうしても苦手なら3分の1でも合格できますが、半分取れると合格率はぐっと上がります。全部捨てると、残りで一問も落とせなくなります。
電卓は使えますか
使えません。CBT方式でも画面に電卓はなく、持ち込みもできません。だから手で計算できる状態にしておく必要があります。
公式は覚えたのに、問題が解けません
よくあります。詰まっているのは電気ではなく、式の変形であることがほとんどです。分数に戻ってみてください。
どこから手をつければいいか分かりません
1コマ受けていただければ、今どこで止まっているかをその場でお伝えします。計算なのか、公式なのか、そもそもの読み取りなのかで、やることが変わります。
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