資格を取ったあと、何ができるようになるか。独立までの3年の話
「取ったあと、どうなるんですか」
受講を迷っている方から、いちばんよく聞かれます。資格を取る理由は、もちろん電気工事ができるようになるためです。でも、それだけではありません。
AIが進むほど、手を動かす仕事に目が向いています
ここ数年、はっきり空気が変わりました。AIブームで、いわゆるブルーカラーの仕事に注目が集まっています。
一方で、事務の仕事は人が余っていると言われます。希望する人が多いので、一つの募集に何人も集まります。どうしても競争になります。
これは感覚の話ではありません。数字にも出ています。
読み方は簡単です。1.00より大きければ、求職者より求人のほうが多い。1.00より小さければ、その逆です。
| 職業(中分類) | 有効求人倍率 |
|---|---|
| 建設躯体工事 | 7.94 |
| 土木作業 | 6.49 |
| 介護サービス | 3.82 |
| 電気工事 | 3.26 |
| 自動車運転 | 2.53 |
| 飲食物調理 | 2.18 |
| 商品販売 | 1.73 |
| 情報処理・通信技術者 | 1.34 |
| 運搬 | 1.03 |
| 一般事務 | 0.29 |
一般事務は0.29倍です。求人1件に対して、3人以上が並んでいる計算になります。事務職が競争になる、というのはこういうことです。
電気工事は逆です。3.26倍。人が足りていません。そして、ここが大事なところですが──
免許がないとできない仕事です。やる気があっても、資格がなければ手を出せません。だから、持っている人の価値が下がりにくいんです。
同じ現場の仕事でも、たとえば大工さんは免許が要りません。誰でも入れる分、単価が上がりにくい。電気工事士の賃金のほうが高いのは、そういう理由もあると思っています。
いちばん大きいのは、独立できることです
取ったあとの一番の違いは、ここだと思います。独立しやすいんです。
分かりやすいのがエアコンです。エアコンをつけられるようになれば、仕事は無数にあります。夏になれば追いつかないほどです。
会社に勤めながらでも、自分の腕一本でも成立する。ここまで独立の道が見えている資格は、そう多くありません。
自分の家の工事も、できるようになります
仕事の話ばかりしましたが、こちらも大きいです。
いまは、自分の家でもコンセントを1つ増やすことはできません。DIYが得意な方でも、ここだけは手を出せません。資格がないと法律で禁じられているからです。
それが、できるようになります。
- コンセントやスイッチを増やす・移す
- 照明の器具を、直付けのものに交換する
- エアコンの電源を引く
自宅のエアコンを、YouTubeを見ながら自分で取り付けてもいいわけです。資格がある人がやる分には、違法ではなくなります。
ちなみに、自分の家の工事なら電気工事業の登録は要りません。登録が必要なのは、他人から工事を請け負う場合です。
ただし──自己責任です。ここははっきり書いておきます。電気は、間違えると火が出ます。感電もします。「できる」と「うまくできる」は違います。不安なところは無理をしないでください。
それでも、自分の家に手を入れられるようになるのは、単純に楽しいです。棚を作るのと同じ感覚で、電気を足せるようになります。
でも、取った翌日にエアコンはつけられません
正直に書きます。
資格を取っただけの人が、いきなり一人でエアコンを取り付けられるか。答えはNOです。
試験でやるのは、机の上の候補問題です。実際の現場は、壁があって、天井があって、既設の配線があります。やはり修業が必要です。ここをごまかすつもりはありません。
独立できるのは3年後です。これは決まっています
そして、修業が必要なのは腕の問題だけではありません。制度としても3年かかります。
自分で電気工事の仕事を請けるには、電気工事業者としての登録が必要です。そして登録するには、営業所ごとに主任電気工事士を置かなければなりません。
| 資格 | 主任電気工事士になれるか |
|---|---|
| 第一種電気工事士 | 実務経験の年数を問わず、なれます |
| 第二種電気工事士 | 免状の交付を受けたあと、電気工事に関し3年以上の実務経験が必要です |
だから「3年をめどに修業して独立する」という人がいちばん多いんです。気合いの話ではなく、制度がそうなっています。
この「3年」は、経過した年数ではありません
ここを勘違いする人が多いので、書いておきます。
免状を取ってから3年経った、では足りません。電気工事に実際に携わった期間の通算で、最低36か月です。持っているだけで待っていても、1日も進みません。
そして、その3年は証明する必要があります。実務経験証明書を出すことになるので、どこで、いつからいつまで働いていたかがはっきりしていることが大事です。在籍の裏づけとしては、社会保険に入っている状態がいちばん分かりやすい形になります。
逆に言うと、その場かぎりの手伝いを積み上げても、あとで証明に困ります。ここが、就職をおすすめするいちばん現実的な理由です。
いずれ独立したい人ほど、まず就職してください
まとめると、こういうことです。
- 腕がつきます。現場でしか身につかないことのほうが多いです
- 実績が残ります。3年の実務経験は、独立の入口そのものです
- 証明できる形で残ります。あとから困りません
独立したいから就職しない、は逆です。独立したいからこそ、就職してください。3年後の自分のために働く3年になります。
就職先のご紹介もしています
当校では、就職先のご紹介もしています。
とはいえ、正直に言うとこの分野の就職活動は、そこまで難しいものではありません。引く手あまただからです。資格を持っている人が足りていないので、探せば見つかります。
だからこそ、選ぶ側に回れます。どんな工事をしている会社か、実務経験としてきちんと積めるか。せっかくなら、3年後につながるところを選んでください。そのあたりの相談にも乗ります。
女性は、だいたい2つに分かれます
当校で女性の受講生とお話ししていると、目指す先はきれいに2つに分かれます。
- 現場に出たい人。実際に工事をしたい、手に職をつけたい
- 事務で有利になりたい人。現場には出ないけれど、電気の会社で働きたい
後者を「もったいない」とは思いません。むしろ、かなり強い選択です。
事務職は希望者が多い仕事です。応募が集まるので、条件のいい求人ほど競争になります。そこに「第二種電気工事士を持っている事務員」が来たら、どう見えるか。
- 見積の中身が分かります。材料名も工事の順番も、言葉が通じます
- 図面を見ても止まりません。電話口で「どの現場のどの話か」がつかめます
- 資格の管理ができます。免状、実務経験、登録。会社にとって面倒な部分です
言うまでもないことですが、いろいろな面で有利になります。現場に出るつもりがなくても、取る価値は十分あります。
事務を目指すなら、ExcelとCADもあると強いです
さらに言うと、ExcelとCADができると、もう一段変わります。
CADと聞くと身構える方がいますが、電気の配線図が書ければいいので、2Dで十分です。建築の3Dモデルまで覚える必要はありません。ここは安心してください。
想像してみてください。資格があって、見積をExcelで作れて、図面を直せる事務員。
- 現場に聞き返さなくても、図面のちょっとした修正ができます
- 見積や材料の一覧を、自分で組み立てられます
- 職人さんの言っていることが、そのまま図面と結びつきます
かなりの戦力です。小さな会社ほど、この3つを1人でできる人を探しています。イメージできるのではないでしょうか。
当校では、この組み合わせを転職フルパックコースとしてご用意しています。資格を取ったあとの話は資格取得後のページにもまとめました。
女性が実技で不利と言われる理由と、その解き方はこの記事に書きました。
資格を取ったら、すぐ独立できますか
できません。腕の面でも制度の面でも3年かかります。第二種で主任電気工事士になるには、免状交付後3年以上の実務経験が必要です。まずは就職して、その3年を積んでください。
3年は、免状を取ってから待てばいいのですか
違います。実際に電気工事に携わった期間の通算で最低36か月です。持っているだけでは1日も進みません。
自分の家の工事だけしたいのですが、資格は要りますか
要ります。自宅であっても、コンセントの増設や照明の直付けなどは資格がないとできません。逆に言えば、資格を取れば自分の家の工事は自由にできます。その場合、電気工事業の登録は不要です。ただし自己責任になりますので、無理はしないでください。
未経験でも就職できますか
資格があるかどうかで、入口の広さが変わります。人が足りていない分野なので、免状を持っている未経験者は歓迎されやすいです。
就職先は紹介してもらえますか
ご紹介しています。ただ、この分野は引く手あまたなので、就職活動そのものはそれほど難しくありません。むしろ「実務経験をきちんと積める会社かどうか」で選ぶ相談のほうが多いです。
現場に出るつもりはありません。それでも意味がありますか
あります。電気の会社で事務をするなら、見積・材料・図面の話が通じるだけで扱いが変わります。事務職は競争になりやすいので、差がつくところを持っておくのは有効です。
事務職を目指す場合、CADも必要ですか
必須ではありませんが、あると強いです。電気の配線図が書ければよいので2Dで十分です。資格・Excel・CADの3つがそろうと、小さな会社ほど手放したくない人材になります。
第一種まで取ったほうがいいですか
独立を急ぐなら選択肢になります。ただし第一種は実務経験がないと免状が出ません。まずは第二種を取って働きはじめるほうが、結果的に早いことが多いです。
※ 主任電気工事士の要件は、経済産業省 産業保安監督部「登録電気工事業者として登録申請を行う場合」によります。「3年以上」は免状交付後に電気工事へ正味携わった期間の通算(最低36か月)であり、免状取得から3年が経過したという意味ではありません。
※ 実務経験の証明方法や必要書類は、登録先の窓口によって取扱いが異なります。開業を検討される際は、必ず所管の産業保安監督部・都道府県にご確認ください。
※ 自宅の工事について:一般用電気工作物の電気工事は、電気工事士でなければ従事できません(電気工事士法)。資格取得後にご自身の住宅で作業される場合も、感電・漏電・火災の危険があります。結果はご自身の責任になります。分電盤やブレーカー周りなど不安のある作業は、事業者にご依頼ください。
※ グラフと表の出典:厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年7月分)」参考統計表の職業別(中分類)常用(パート含む)有効求人倍率をもとに当校が作成しました。数値は毎月更新され、季節によっても動きます。最新の値は同統計でご確認ください。
※ 賃金や求人の状況についての記述は、当校が受講生や求人を見てきた範囲での認識です。特定の収入を保証するものではありません。
取ったあとをどう使うかまで含めて相談したい方は、無料体験レッスンからどうぞ。学科の進め方は学科試験対策、実技は技能試験対策のページにまとめています。